山陽リレーコラム「平井の丘から」

父の旅立ちに想う 濵松恵子

掲載日:2025年3月3日
カテゴリ:看護学研究科・助産学専攻科・看護学部
元気だった父が旅立ちました。旅立つ前の1ヶ月、父は入院生活を送りました。
「少し先の話」と思っていた親の介護はある日突然やってきました。晩婚化に伴った出産年齢の高齢化で、子育て中ながらも介護の必要性が出てくる「ダブルケア」が増加傾向といわれていますが、私も例外ではありませんでした。
仕事と育児と介護に追われ、悩みが尽きない日々に、その気持ちを和らげてくれたのは職場の方々でした。「休んで早く行ってあげて。」「代われることは代わるよ。」と幾度となく声をかけていただきました。また、「私は認知症の母が一人暮らし・・・。お父様のこと大変でしょう。」「父は入院していて、母は介護が必要で・・・。」と経験を話してくださる方も少なくありませんでした。
あの時優しく声をかけてくださった方々は、仕事と介護の両立に今日も悩んでおられると思います。介護は誰もが直面する可能性があるもの。「お互いさま」という気持ちで、協力したいと強く思うようになりました。

もうひとつ父の旅立ちを通して考えたことがあります。
私は「看護過程の展開」という科目を担当しています。看護師は看護過程を展開して、患者様に対してどのように看護を行うか決定し、実践します。父が旅立ったのは、ちょうど臨地実習が始まろうとする2年生に、“看護師らしく考える”ことを講義している時期でした。
父は回復の兆しがあったものの急変し、私が病院に着いた時には息を引き取っていました。主治医の説明を聞きながら、電子カルテに目をやると、おそらく担当看護師の方が入力されたその日の父の言葉が入力されていました。『ありがとうございます。すみません。』謙虚な父らしい最期の言葉だなと胸がいっぱいになるとともに、看護記録が残すものの大きさを感じました。
看護過程に看護記録は欠かせませんが、臨地実習における実習記録は学生にとって難題です。私は学生たちに、この看護記録のおかげでとても救われたことを講義で伝え、今、学生とともに臨地実習に臨んでいます。
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