山陽リレーコラム「平井の丘から」

経済学って難しい...... 田鹿紘
[2024年11月5日]

掲載日:2024年11月5日
カテゴリ:地域マネジメント学科
世間では経済学に苦手意識を持っている人が多いようである。「経済学はお金儲けの必勝法を学ぶ学問ではない」「経済学部は文系の学部だけど、経済学は数学を多用する」と聞くと、がっかりしてしまうようだ。おそらく学生にとっては後者が大きいと思われる。「社会科だと思ったら数学だった」という声は頻繁に耳にする。これは、いわゆる「経済学あるある」である。

経済学ではグラフや数式がたくさん出てくる。例えば、グラフの中の図形の面積を計算する問題がある。やっている計算はそれほど難しいわけではないが、「この三角形は〇〇を表している」と説明が付け加わると、学生は難しく感じるようだ。かといって、「とりあえずそんなもんだと割り切って計算しましょう」と説明を省略してしまうと、経済学ではなく数学やパズルゲームになってしまうので、それだけは避けたい。

では、図や数式を使わなければよいのかといえば、これまた大変である。説明を尽くそうと頑張れば「話が長い」「雑談している」と思われることもある。地域マネジメント学科の経済学の授業は経済学部の授業ではないため、可能な限り数式を排除しているが、経済学の骨身の部分を失わず、それでいて学生に馴染みがあり、スッと染み込むように説明するのはなかなか骨が折れる。

ちなみに、アメリカの経済学の教科書は日本のものと比べると何倍も分厚く、邦訳で700ページを超えるものもあるのだが、例え話が豊富で読み物として面白い。 好きになれば非常に楽しい科目なのに、好きになるまでの道のりが長い科目なのかもしれない。そして、教える側も試行錯誤の連続である。

さて、最近ヒットした漫画やアニメには、「これって経済学の話だな」と感じたり、「経済学のコラムに載っていても良いかも」と思えるお話がいくつもある。思い浮かんだ作品は、もちろん経済がテーマなのではない。作品の中に経済学の素材が含まれていたり、経済学の視点から見るとより奥深いところが見えてくるのである。こうした、学生にとって身近な趣味やカルチャーを掘り下げていくことで、経済学に親近感を持ってもらうこともありなのかもしれない。

なのでわたしは、授業で「授業で学んだことを使って自分の好きなものを観察してみると、あなたの『好き』がもっと『好き』に変わるかもよ。それに対する見方も変わりますよ」と口にしたのである。

果たして、「好きなもの」のこれまで見えていなかった一面に気付かせてくれる経済学の面白みを知り、さらには経済学を「好きなもの」の一つに加えてくれるような学生が増えるだろうか......?
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