山陽リレーコラム「平井の丘から」

災害後における子どもの心と生活  上地 玲子
[2018年9月20日]

掲載日:2018年9月20日
カテゴリ:ビジネス心理学科

 岡山県では,7月豪雨災害が発生し,甚大な被害がありました。そのほか,日本各地において災害による被害が続いております。

 災害によって,避難生活を余儀なくされたり,大切な家族を失ったりした子どもたちの心には様々な変化が起きています。あるいは,直接災害被害に遭っていなくても,テレビのニュースで繰り返し映像を見ることによって,間接的に心理的影響を受けている子どもたちもいます。

 子どもは自分の気持ちを言葉でうまく表現することができません。急に甘えん坊になったり,我がままになったり,乱暴になったりすることがあります。また,寝つきが悪くなったり,食欲の変化が起きたりします。中には,「災害ごっこ」をして,大人が困惑するような遊びをすることもあります。これらは,子どもの心の変化であり,サインでもあります。災害ごっこも遊びを通して,子どもなりに災害について消化しようとしているのです。

 むやみに叱ったりせず,まずは子どもの心に耳を傾け,安心で安全な生活を提供できるように環境を整えてほしいです。避難所生活を送っている場合は,特にその配慮が必要になってきます。

 発達障がいのある子どもの場合は,いつも以上に混乱をきたしてしまうことがあり,こだわりが強くなったり,かんしゃくを起こしやすくなったります。知的発達のレベルに合わせて今の状況を子どもに説明し,視覚支援などを取り入れたりしながら,安心できる環境を提供してください。


【文献】
一般社団法人日本自閉症協会「防災・支援ハンドブック」http://www.autism.or.jp/bousai/(2018.9.16)
文部科学省「子どもの心のケアのために ―災害や事件・事故発生時を中心に―」http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1297484.htm(2018.9.16)

アンティックピアノの魅力  田中 節夫
[2018年9月12日]

掲載日:2018年9月12日
カテゴリ:こども育成学科

 日本でピアノといえばヤマハかカワイを思い浮かべることと思います。或いはスタインウェイ。世界にはその他にも有名なメーカーが数々あります。例えばベーゼンドルファー、ベヒシュタインなど。私がドイツに留学していた頃、当地の音楽大学には他にもシンメルン、グロートリアンなどがありました。
 でも私が一番好きだったピアノはフランスで弾いたプレイエルというピアノです。プレイエル社はもうありませんが、かつてはショパンが最も好んだピアノとして有名でした。プレイエルは高音が良く響き、良く歌ってくれるピアノで、ショパンはこういう響きを好んだんだな、ということが身を持って感じることができました。また、フランスの作曲家ラヴェルもこういうピアノの響きを知っていたからこんな曲を書いたんだ、と納得しました。プレイエルはもうアンティックの部類ですが、現代のピアノが失ってしまった古き良き時代の響き、香りを伝えてくれます。

 岡山在住のチェリスト、M氏はグロートリアンのアンティックピアノを持っていらっしゃいます。このピアノはショパンと同い年のシューマンの夫人、有名なピアニストのクララ・シューマンが愛用していたそうで、M氏が手に入れ、修復したそうです。一度弾かせていただきましたが、やはり古き良き時代を感じさせるうっとりとするような音色とタッチでした。またデザインもロココ調で素晴らしいです。

 ところで本学の私の研究室にも同じ古い時代の、今では手に入らない貴重なグロートリアンのアップライトピアノがあります。これは山陽学園の理事長だった星島義兵衛氏が寄贈してくださったそうですが、少し修復が必要な状態です。私は本学に着任以来、このピアノを何とかしたいと考えています。最近では古いピアノを修復し、コンサートを行い大きな話題になっているところがいくつもあります。
 本学でもこのピアノを修復してコンサートを行なったり、在学生や卒業生に弾いてもらうことができれば、寄贈してくださった星島氏も喜んでくれることと思います。

 
星島氏寄贈のグロートリアン

時間生物学や遺伝的要因と学生の朝の遅刻  今村 恭子
[2018年9月6日]

掲載日:2018年9月6日
カテゴリ:看護学研究科・助産学専攻科・看護学部

 ここ数年、新幹線での移動時間にはNewton 1冊をパラパラ読むのがマイブームで、難しい専門書や論文を読む前の導入剤として活用している。その内容の一部と最近の研究などを参考に生物学的側面から学生の遅刻について考えてみた。

 近年、DNAの解読と遺伝子研究の進歩によって、朝型か夜型か、お酒に強いか弱いか、性格、薬剤の効果などが遺伝子検査で特定できるようになった。地球がオゾン層に包まれる前の太古の昔、太陽光で破壊された生物のDNAは夜間に修復される機能を備えていたが、オゾン層の形成で有害な紫外線が吸収されるようになってからは、夜間のDNA修復機能は退化し、光の感知作用のみが残った。光を感知できるのは唯一眼球だけであり、私たちは目から朝の光を取り込み、活動に適した体のリズムを整え、身体のあちこちにある体内時計の調節を行っている。日の入り後は、昼間と対照的に強い光を遮断することで良質な睡眠を導くメラトニン分泌機能が備わっている。

 日本は、アメリカやヨーロッパと並んで夜間の照度が高い国である。その他、私たちの生活環境は良質な睡眠が脅かされる要因が多く、学生も例外ではない。夜間帯のアルバイトと学業の両立を余儀なくされる学生、深夜までパソコンに向かって課題に取り組む状況などは、日の入り以降にブルーライトをたっぷりと吸収した結果、メラトニン分泌を阻害し、体内時計の乱れや時間の感覚のずれを引き起こすといわれている。また、遺伝子的要因に関連して朝型や夜型の特性は学生の遅刻に影響する可能性も考えられる。

 「遅刻する」という固定概念は見直しの時にあり、遅刻しやすい教育環境を教員が作り出していないか、学生の生活状況や学習環境をどのように把握するのか、考えてみようと思う。

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