山陽リレーコラム「平井の丘から」

虐待について考えてみましょう  荒島 礼子
[2019年4月16日]

掲載日:2019年4月16日
カテゴリ:こども育成学科

 近年、児童虐待が後を絶たず、大きなニュースとなっています。政府においても、児童虐待防止法の強化が叫ばれているところです。

 さて、私が保育現場にいたとき、1つの虐待事例を認めました。3歳のAちゃんの指に丸いやけどの跡があったのです。私はAちゃんを抱っこして「ここどうしたの?」と聞くと「たばこで焼いた。」と答えました。「誰がしたの?」と聞くとAちゃんは答えません。どのくらい時間がたったでしょうか「お父ちゃんがした。」と答えました。私はその答えを予想はしていたものの、大きな衝撃を受けました。私は、Aちゃんの手をさすりながら「熱かったね、痛かったね。」と言いました。するとAちゃんは「でも私泣かんかったよ。」と言ったのです。「痛かったら痛い、熱かったら熱い、お父ちゃんやめてって言わんといけんよ。」そういうのが精いっぱいの私でした。

 役所の保健師に連絡を入れると、すぐに児童相談所含む多くの関係者が集まって会議がもたれました。そしてその後児童相談所の依頼を受け、児童民生委員会議で事例報告をしました。それはちょうど虐待防止法ができた年の事でした。

 今私は、幼児教育を学ぶ学生にこの事例を伝えながら、子どもの人権についての授業を実施しています。又、大学でも『sanyo子育て愛ねっと』として子育て支援事業に取り組んでいます。

 社会全体で、虐待防止について真剣に考えていかなければならないと強く思っています。

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桜の花々とともに  学長 齊藤 育子
[2019年4月10日]

掲載日:2019年4月10日

 本学の東門前の桜が、満開になっています。今年は例年より少し遅めだったように思いますが、咲き始めた頃に入学された新入生の皆さんもオリエンテーション期間が終わり、授業が開始されました。「入学式と桜」といったように、皆さまも桜の花にまつわる多くの想い出がそれぞれにございましょう。私は、山梨県甲府市にあるミッション系の短期大学に、教育原理等を担当する教職課程の専任教員として、1985(昭和60)年に着任いたしました。その山梨での8年間の暮らしのなかで、忘れられない場所があります。それは旧北巨摩郡長坂町(北杜市)の清春芸術村(Kiyoharu Art Colony)です。

 この芸術村は、もともと廃校になった清春小学校の跡地に建築されたのですが、子どもたちの手によって校庭に植えられたソメイヨシノが多数あり、それが実に美しいのです。敷地の中央には、「ラ・リューシュ」(La Ruche)と呼ばれる十六角形の建物があります。これは、芸術家たちの創作活動ができるアトリエなのですが、希望者に貸し出されています。このラ・リューシュは、パリにあるものと同じ設計図で建てられたとのことです。この広大な芸術村の敷地の中に、清春白樺美術館もあります。そこでは、武者小路実篤や志賀直哉等々の「白樺派」の書画や・原稿・近代洋画などが蒐集され展示されています。

 さらに、敷地内には小さな会堂がひっそりと建てられており、誰でも祈りの時が持てるようになっています。「ルオー礼拝堂」と名付けられた会堂は、宗教画家ジョルジュ・ルオーを記念して建てられたのですが、祭壇背後には、十字架のキリスト像があります。その像は、次女イザベル・ルオーによって寄付されたとのことですが、ルオー自身が彩色し、彼が毎日祈りを捧げていたそのものとのことです。そのほかにも、移築された梅原龍三郎のアトリエなどの施設もあります。この芸術村は、東京吉井画廊の吉井長三が、私財を投じて作られたといわれています。

 きっと誰も知らないことですが、静寂だったこの場所で、当時の私は、自己を見つめる時を持っていました。人は皆誰でも、どうしようもなく辛いこと悲しいことに立ち向かわなければならないことがありますが、自己を静かに顧みるには、静かな時間と空間が是非とも必要ではないでしょうか。桜の花が咲くたびに、私は甲斐駒ケ岳の山々を背景に咲く美しい桜の花々とともに、ラ・リュージュそして、自己と対峙したあの「静寂な時・空間」を思い出します。いくつになっても、ソクラテスの力説した「善く生きること(to eu zēn)」を目指し続けたいものです。

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〈本学の東門前の桜〉
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