山陽リレーコラム「平井の丘から」

門田界隈  濱田 栄夫
[2018年5月28日]

掲載日:2018年5月28日
カテゴリ:言語文化学科

 本学は、操山に連なる丘陵地(地理学的には操山山塊)の山麓に位置している。操山は、古くからの二本の街道(山陽道と牛窓街道)が吉井川、百間川をへて、岡山城下の京橋近くで合流する前に、その二本の街道にはさまれて位置する小高い山である。操山に登ろうとすれば、東山行の電車の終点で降りて、東山交番所の右横当りから歩くか、護国神社に隣接した奥市グランドに面した登山口から歩き始めるとわかりやすい。

 この東山電停と、ひとつ手前の門田屋敷電停との間一帯は門田界隈と言われている。この当りの一角(玉井宮・東照宮の側)に、明治12年に木造の西洋館が三棟建てられ、そこに三組の宣教師家族が住みついたことから、この地域一帯に近代化に向けての新しい風が吹き始めた。山陽英和女学校、薇陽学院などの中等教育施設が建ち、岡山孤児院が開設され、岡山博愛会運動が展開された。やや遅れて明治33年に第六高等学校がすぐ隣接地域に建てられた。

 そこに集った人々は、キリスト教の信仰態度・人間観に触発された人々を中心に独自なネットワークを形成し始める。そしてそのネットワークは確かな足どりで展開され、やがて全国的にも注目されるようになる。それは全国的に見てもきわめて質の高い人間関係に支えられたネットワークだった。2012年に刊行した拙著『門田界隈の道 -もう一つの岡山文化』は、その地域で活躍した人々とその業績についての私なりの歴史解釈の試みである。

 また、気候が良いとき、山陽学園発行の「SANYO HISTORY MAP-旭川の東 操山の麓-」を片手に散策されることをお勧めする。

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画像は「SANYO HISTORY MAP-旭川の東 操山の麓-」の抜粋

ハナミズキに想う 学長 齊藤 育子
[2018年5月1日]

掲載日:2018年5月1日

何の花が好きですかと問われたら、「白いハナミズキ」と迷わず答えます。学内には、白い花水木がたくさんあって、緑の葉と共に風にそよぐ様子を見ていると不思議と穏やかな気持ちになります。花水木は、ご存知のように白や赤そしてピンク色がありますが、花弁にみえる総苞は4枚で、ちょうど十字架のように見えます。最近になって花水木の花言葉が、「私の思いを受け取って」とのことを知りました。学内に花水木をお植えくださった先達の思いを受け継ぎたいと切に願っています。

花水木について調べてみると、大正期に当時の東京市長が、ワシントンD.C.にサクラを贈ったことへの返礼として、アメリカから贈られたとのことです。麗しい話と思っていましたが、第二次大戦中に敵国から贈られた木ということで、日本では伐採したり引き抜いたりしたのだそうです。なんとも悲しい話です。そうした時代には、二度と戻ってはならないと強く思います。

同じ花でも一つ一つをよく見ていると、大きさや色合いや形がそれぞれに違い驚かされます。亡くなられた百歳の詩人まどみちおさんの「どんな小さなものでも みつめていると 宇宙につながっている」という詩と一緒に、ガントレット宣教師から贈られた花をご覧になって発せられた上代淑先生の「天然の巧妙驚くべく、また感ずべし」との言葉をも思い出します。私たち人間も、唯一無二の存在として大切に生きたいものです。

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