精神分析学の創始者であるS.フロイトは、「人生において大切なことは何ですか」という知人の質問に、「それは、働くことと愛することだ」と、即座に答えたといわれています。人生において大切なことは、それを問うている人がライフステージのどこら辺りに立っているかで違ってくるでしょうが、もし、充実した人生のために何が大切かと若者から問われたら、私もやはり、フロイトに倣って、「働くことにおいて充実していること、愛することにおいて充実していること。この2つだ。」と答えたいと思います。
ここで注目すべきは、働くことにおいても、愛することにおいても、人は人とつながらなければならず、しかもそのつながりにおいて自分らしくあらねばならないということです。働くことも、愛することも、一人ではうまくいかないが、しかし、自分を失ってはならない。そういう私たちの社会的自己実現にかかわる大事なことがらが、働くことと愛することにおいて最も際立つのだ、といってよいでしょう。
コロナ禍によって、私たちは、人と人がつながることについての制約を受けることになりました。当たり前のものがそうでなくなったときに、私たちはそのものの価値(有り難さ)を改めて問うことになります。山陽学園大学・短期大学において学ばれる皆さんが、人と人がつながることの難しさとともに、つながることの尊さ、すばらしさを最もよく学んだ人になることを、私は心から願っています。