山陽リレーコラム「平井の丘から」

わくドキの子どもの心に寄り添う 前田信美
[2023年1月27日]

掲載日:2023年1月27日
カテゴリ:こども育成学科
 本学に勤務する前、私が保育園の園長を務めていた頃の話である。
 「わっ青い種だ!」ヒマワリを園で植えたようとした時、袋から出てきた種は青かった。 子ども達は、自分の知っている種と違っていたのでとても不思議がった。「青いヒマワリが咲くかも?」と大騒ぎ。 
 私の所へ「園長先生、大変、種が青いんよ。青いヒマワリが咲くんかな?」と目を輝かせて言いに来た。「そうね、青いヒマワリが咲くかもね」と私は答えて、子ども達に、長い年月、夢を描いて研究を続けたことで青いバラを咲かせることができた話をした。「アプローズ」と名付けられたそのバラの花言葉は“夢 かなう”であることを伝えた。 
 5歳児の子どもたちは、その話を聞き「夢がかなうかも」と真剣に青いヒマワリを咲かせることを考えた。(1)青い水をあげる(2)青い光をあてる(3)毎日お世話をする、というプロジェクト活動となった。子どもたちの発想を実現するために、保育者も一緒に真剣に考えた。青い水はかき氷の蜜、青い光はブラックライト、そして子ども達の取り組みを写真で掲示し可視化していった。ヒマワリの成長を楽しみにしながら、小さな変化を見つけようと、毎日子ども達も保育者もワクドキ活動(わくわく、ドキドキする活動)をしていた。 
 残念なことに蕾からのぞいた花の色は黄色だった。しかし、花が開いたとき管状花がないことを発見した。「すごい、やっぱりこの青い種は、不思議な種だ」。残念がっている子ども達に、次のわくドキがやってきた。きっと、次々に“不思議”と出会った子ども達の心には、わくドキする心、科学する心が芽を出したはずだ。
 大人はなぜ種が青いかは分かっているが、保育者はすぐに現実を子どもに伝えるのではない。子どもが不思議と出会い、わくドキし、夢を描いた時、その夢に寄り添い、探究する姿につき合いながら、子どもの思いが少しでも叶うように援助やヒントを与える。子どもの“わくドキ”は心の揺れ、“なぜ”は活動の原動力であるからだ。 
 保育者は、子どもの感性や科学する心を育てると共に、将来大人になっても夢を追いかけられる人であるように、上手くいかないことがあっても、また歩き始め、夢を追いかけられる人であるようにと願いながら、子どもの心を受けとめ、そして寄り添っているのである。
最近の更新状況
俳句に親しむ 石橋昭子[2024年9月19日]
弟に思いを馳せて 室谷実愛[2024年8月24日]
韓国との「距離感」 久留島哲[2024年6月25日]
岡山の空とドビュッシーの音楽 桐岡亜由美[2024年5月27日]
デジタル社会に想う 米田瑞生[2024年5月1日]
推し活ブーム 中平絢子[2024年3月28日]
マラソンを通じて思うこと 森本眞寿代[2024年1月23日]
こころを大切にする 赤井美智代[2023年10月31日]
「栄養教諭」は「食の大切さ」の伝道師です 岩崎由香里[2023年9月29日]
日本語の変化と日本語教師 山田勇人[2023年8月8日]
教育は長く、人生は短し 神田將志[2023年7月31日]
永遠に生き続ける言葉 酒井正治[2023年7月5日]
働くことと愛すること 毛利猛[2023年5月16日]
茶道の心得 野々上敬子[2023年3月30日]
絵本の世界への切符(認定絵本士養成講座) 磯野千恵[2023年2月27日]
わくドキの子どもの心に寄り添う 前田信美[2023年1月27日]
みなさん データサイエンスを勉強しましょう 岩本隆志[2022年12月14日]
農福学連携をとおして 大島珠子[2022年11月24日]
母と私と息子たち 目良宣子[2022年10月3日]
「地元」に伝え残したいもの 大木淳子[2022年9月21日]
プラットフォーマーと大学 西川英臣[2022年8月1日]
新たな教育県岡山に向けて 菅野昌史[2022年7月21日]
現場から得られる宝物 横溝功[2022年6月8日]
好感度はどう上げる? 藤田依久子[2022年5月27日]
英語圏へのどこでもドア 中野香[2021年6月2日]