山陽リレーコラム「平井の丘から」

韓国との「距離感」 久留島哲

掲載日:2024年6月25日
カテゴリ:言語文化学科
今年4月に言語文化学科に着任して、はや3か月が過ぎました。私は大学で韓国朝鮮史を専攻し、本学では「朝鮮の歴史と文化」といった授業を担当しています。授業を通じて10代~20代の学生たちと接するなかで、これまでにはあまり強く意識してこなかった様々な事へ目を向けるようになりました。その一つが、韓国文化や韓国社会に対する今の学生たちの「距離感」です。

私が10代の頃は、既に日本で第一次韓流ブーム(2000年代初頭)が生じていたので、私自身韓国という存在をある程度身近に感じながら10代~20代を過ごしてきたつもりでした。しかし、今の学生たちの話を聞くと、韓国のK–POPや食文化はもちろん、メイクやファッションなど、韓国の同世代の流行がほとんどタイムラグなく日本に伝わってきていることを強く実感しています。現在、高性能になった翻訳機能のおかげもあり、韓国語能力にそこまで左右されずに、韓国の最新コンテンツが気軽に楽しめる環境が生まれています。個人的にはむしろ、「韓国の」流行という風に韓国発であることを特にただし書きせずとも、面白いものや楽しいこと、可愛いものを積極的に受け入れる雰囲気があるように感じます。

ただ、少し気がかりな点もあります。最新の流行や文化を楽しむ一方、韓国社会の様々な社会問題や文化的背景、歴史などについては、「難しそう」と最初から及び腰になる学生が多いことです。同じ「韓国の情報」であっても、その内容の馴染みやすさで受け取る意欲に大きな差があるのが、今の日本の学生の、韓国とのリアルな「距離感」なのだと思いますが、「難しそう」といった先入観だけで敬遠してしまうのは、正直に言ってもったいないと感じます。

文化や歴史を学ぶとき、常に自分にとって「楽しい」「ポジティブ」な話題ばかり出てくるわけではありません。時には、複雑に絡み合った関係性や「難しい」「ネガティブ」な問題などが出てきます。しかし、自分の中で理解を深めるために、そうした話題に向き合うことを過度に敬遠しないでもらいたいと願っています。学生の苦手意識を少しでも軽くできるよう、私も授業や色々な場面で手助けしていくつもりです。
最近の更新状況
岡山で方言を楽しむ 中野晃希[2025年1月9日]
大きくなるっていうことは 吉井鮎美[2024年12月25日]
経済学って難しい...... 田鹿紘[2024年11月5日]
俳句に親しむ 石橋昭子[2024年9月19日]
弟に思いを馳せて 室谷実愛[2024年8月24日]
韓国との「距離感」 久留島哲[2024年6月25日]
岡山の空とドビュッシーの音楽 桐岡亜由美[2024年5月27日]
デジタル社会に想う 米田瑞生[2024年5月1日]
推し活ブーム 中平絢子[2024年3月28日]
マラソンを通じて思うこと 森本眞寿代[2024年1月23日]
こころを大切にする 赤井美智代[2023年10月31日]
「栄養教諭」は「食の大切さ」の伝道師です 岩崎由香里[2023年9月29日]
日本語の変化と日本語教師 山田勇人[2023年8月8日]
教育は長く、人生は短し 神田將志[2023年7月31日]
永遠に生き続ける言葉 酒井正治[2023年7月5日]
働くことと愛すること 毛利猛[2023年5月16日]
茶道の心得 野々上敬子[2023年3月30日]
絵本の世界への切符(認定絵本士養成講座) 磯野千恵[2023年2月27日]
わくドキの子どもの心に寄り添う 前田信美[2023年1月27日]
みなさん データサイエンスを勉強しましょう 岩本隆志[2022年12月14日]
農福学連携をとおして 大島珠子[2022年11月24日]
母と私と息子たち 目良宣子[2022年10月3日]
「地元」に伝え残したいもの 大木淳子[2022年9月21日]
プラットフォーマーと大学 西川英臣[2022年8月1日]
新たな教育県岡山に向けて 菅野昌史[2022年7月21日]