山陽リレーコラム「平井の丘から」
なんとなくエコ 西村 武司
私はたまにエコを意識しています。普段,あまりエアコンを使いません。外食のときは,食べ残すほど注文しません。たまに有機野菜を選びます。ゴミは分別して捨てています。しかし,いつも必ずそうするといった強い信念に基づいて行動しているわけではありません。ときにはエコに反する行動をすることもあります。
暑い夏には冷房を使いますし,寒い冬には暖房を使います。そうしなければ,健康によくないと言い訳をしつつです。実際,暑さや寒さを我慢することは,おそらく健康によくないでしょう。一方,研究室を不在にするときに電気をつけっぱなしにしておくことがあります。この後,再び戻ってくるということを来訪者に示したいときもありますし,ただスイッチを操作するのが面倒なときもあります。
ここ10年くらい,私はパソコンの電源を切っていません。その間に新しく買ったパソコンは,一度も電源を切っていないことになります。これらの行動はエコに反するかもしれません。もしかしたら,反しないかもしれません。技術進歩が過去の常識を覆すことはよくあります。
ところで,有機野菜を食べることはエコでしょうか? 昨年,有機農業は,慣行農業と比較して,地球環境にやさしくないという研究成果が発表され,話題になりました。有機農業では,単位面積あたりの収穫量が著しく減少することが主な理由です。しかし,こうした指摘はさほど新しいものではありません。例えば,地産地消は環境にやさしいでしょうか? 興味のある方は,文末の松永さんの著書を手に取ってみてください。
単純なように見えて単純ではないのが,この世の中です。しかし,深く考え込んでしまうと,ストレスになりますし,何も行動できなくなります。なんとなくエコな生活をなんとなく送って,なんとなくいいことした気分でいられるのが幸せかもしれません。ただ,それでいいですか?
松永和紀『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』日本評論社,2010年。