山陽リレーコラム「平井の丘から」

「地元」に伝え残したいもの 大木淳子

掲載日:2022年9月21日
カテゴリ:健康栄養学科

辛味とは基本五味(甘味、塩味、うま味、苦味、酸味)とは異なり、味覚ではなく刺激としての感覚になります。辛味は消化管も刺激しますので、おいしく食べられる辛さが一番だと思いますが、この刺激がくせになる人も多く、辛さを求めた商品や料理は、一部で根強い人気があります。ここで、辛さの代名詞でもある「唐辛子」の歴史について、私の地元の話をしたいと思います。

江戸時代、新宿周辺は唐辛子の産地でした。

内藤家の下屋敷であった現在の新宿御苑周辺では、唐辛子を含む野菜を栽培していました。江戸時代は蕎麦が大流行し、唐辛子は薬味として大変人気となり近隣の農家も唐辛子の生産をしました。収穫の時期になると一帯は真っ赤に染まったそうです。この「内藤とうがらし」は、ほどよい辛味を持つ八房系の唐辛子でした。しかし、江戸の町の繁栄によって人口が増加し、また唐辛子も辛味の強い「鷹の爪」が主流となり、内藤とうがらしは衰退しました。

しかしながら現代になって内藤とうがらしは「江戸東京野菜」として復活しました。2010年に地元の団体がこの唐辛子の栽培、普及を目指し、地道な活動を続けました。今では苗の販売や、内藤とうがらしを使った企業とのコラボ商品などを展開するまでになりました。私自身も地元のイベントでこの唐辛子を知り、苗を買って栽培したことがあります。8~9月頃には真っ赤で小ぶりな唐辛子がたくさん収穫できました。自宅で育てることのだいご味は、摘んだばかりのものを料理に使えることです。乾燥させて使用するのもよいのですが、摘みたてはフレッシュな辛味と、噛んだときの風味の広がりが格別です。

長い歴史の中で、私たちが普段食べるものは、安定供給できるものや、品種改良でよりおいしくなったものに取って代わり、それに該当しないものは市場から消えていくような淘汰が起こっています。一方で、今回の内藤とうがらしのように、時代を超えて復活し、地元の歴史を伝えてくれる食材として地域活性化に一役買った事例もあります。

自身が育った「地元」の食材に目を向けてみてください。食材を通して地元の歴史を伝え、これからの未来のことを考えられたら素敵ですね。


参考資料

新宿名物、復活!内藤とうがらしプロジェクト|公式サイト  https://naito-togarashi.tokyo/

最近の更新状況
わくドキの子どもの心に寄り添う 前田 信美[2023年1月27日]
みなさん データサイエンスを勉強しましょう 岩本隆志[2022年12月14日]
農福学連携をとおして 大島珠子[2022年11月24日]
母と私と息子たち 目良宣子[2022年10月3日]
「地元」に伝え残したいもの 大木淳子[2022年9月21日]
プラットフォーマーと大学 西川英臣[2022年8月1日]
新たな教育県岡山に向けて 菅野昌史[2022年7月21日]
現場から得られる宝物 横溝功[2022年6月8日]
好感度はどう上げる? 藤田依久子[2022年5月27日]
英語圏へのどこでもドア 中野香[2021年6月2日]
不要不急の30年  田辺大藏 [2020年7月16日]
コロナ禍の中で  北岡宏章[2020年6月30日]
手段の目的化  荒木大治[2020年4月3日]
Hair Donation  那須明美[2020年3月11日]
セルフ・エフィカシー  加藤由美[2020年2月25日]
「睡眠のお話」  梅﨑みどり[2020年2月5日]
「ノーメディアデー」に想う  田村 裕子[2020年1月17日]
瞑想のすすめ!  揚野 裕紀子[2019年12月17日]
ラジオのススメ  浅原 佳紀[2019年11月22日]
ラグビー日本代表 「ワンチーム」の精神  井田 裕子[2019年11月6日]
子は親の鏡  塩谷 由加江[2019年10月19日]
アナログ時計の時空に想うこと  江口 瞳[2019年9月30日]
生業をつくり直す  建井 順子[2019年9月10日]
イケアでの思い出  岩本 隆志[2019年8月27日]
3歳までは母の手で?  権田 あずさ[2019年7月26日]