山陽リレーコラム「平井の丘から」

春を感じる桜餅  松井 佳津子
[2019年3月30日]

掲載日:2019年3月30日
カテゴリ:健康栄養学科

 朝晩はまだ肌寒さはあるものの、草木が萌え芽ぐみ次第に春の訪れを感じる季節となりました。桜の花の開花が待ち遠しいですね。 そんな桜の葉を使った和菓子で、色と香りで春を感じさせてくれる「桜餅」があります。桜の葉で餅を包む工夫は江戸時代に発案されたそうです。この桜餅、2種類あることはご存知でしょうか?「桜餅」と言われて思い浮かべるのは、住んでいる地域によって異なります。 もち米を一度蒸して、乾燥させて粗く砕いた道明寺粉を使って作る「道明寺」。道明寺粉を蒸して餡を包んでいるため、お米の食感が残りつぶつぶとした皮が特徴です。「上方風の桜餅」「関西風の桜餅」といわれ、岡山に住む私たちが食べ親しんでいる桜餅です。

 一方、「長命寺」といわれる桜餅もあります。「江戸風の桜餅」「関東風の桜餅」ともいわれていますが、こちらは皮の材料に小麦粉が使われています。小麦粉に水を混ぜて薄く焼いた皮で餡を包んでいます。「長命寺」と呼ばれる由来は諸説あるようですが、江戸時代、東京の隅田川沿いに長命寺では、川沿いの桜の木から落ちる葉の掃除に日々頭を悩ませていました。そこで、桜の葉を塩漬けにし、それにお餅を包んだのが始まりだとか。長命寺というお寺で初めて作られたことからこの名前がついたそうです。

 関西風と関東風の桜餅に共通しているのが、餅を包んでいる「塩漬けの桜の葉」の存在です。桜の葉で包むことで、特徴ある香り付けやお餅の乾燥を防ぐ効果があります。この葉を食べるのか食べないのかと議論されることもあるが、正式な食べ方は決まっていないようです。

 昨年の5月、私は学内の桜の葉を摘み取り塩漬けにして保存しています。約一年がたち塩漬けされた桜の葉も、そろそろ出番だと感じているかもしれません。

 山陽学園の桜の葉のお味はいかがでしょうかね。美味しい桜餅に変身することを願いつつ、心を込めて作りたいと思います。


食物栄養学科 松井佳津子

岡山の美味しい魚と気候変動(地球温暖化)  白井 信雄
[2019年3月28日]

掲載日:2019年3月28日
カテゴリ:地域マネジメント学科

 岡山で食べる魚は美味しい。穴子(あなご)、蝦蛄(しゃこ)、飯蛸(いいだこ)、鰆(さわら)、そして飯借(ままかり)という別名で知られる鯯(さっぱ)。どれも岡山の漁港で水揚げされ、岡山らしい食文化に貢献してきた。

 しかし、瀬戸内での穴子や蝦蛄、飯蛸等の水揚げの減少が著しい。現在の瀬戸内海の水質は改善されているとはいえ、かつての汚染物質が底泥(これを漁師さんは“ヌマ”という)に蓄積しているためという声もある。

 水がきれいになりすぎて、プランクトンが減り、生態系に影響を与えている可能性もある。加えて、気候変動(地球温暖化)の影響もある。例えば、鰈(かれい)が減っているが、鰈は高温を好まないことも一因であろう。

 一方、気候変動で増えている魚もある。例えば、鱧(はも)。鱧は水温が高い所を好む。鱧が増えて、その食害が穴子等の減少の原因ではないかという説もある。京都の初夏の食として、人気にある鱧であるが、日生で獲られた鱧が港に持ち帰えられることはない。地元の鱧の流通経路ができていないからである。

 近接する徳島や淡路島では取れた鱧をブランド化し、京都等に流通させている。日生でも鱧の流通を確保し、稼ぎを得ていくという道を描くことができる。消費者側から日生の鱧を食べる活動をしていくことも、日生の漁師や漁村、そして海を守ることになる。

 山陽学園大学では、新設の地域マネジメント学部の他に、食品開発ができる先輩学部がある。学内で連携して、鱧料理の開発と普及を図り、瀬戸内の海の魚とそれを稼ぎとする人々、地域の文化と自然を守ることに貢献することができればと感じている。

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写真:日生の海、気候変動でこの景色はどうなるか

甘いものすきですか ~ 和菓子のすすめ  小野 和夫
[2019年3月15日]

掲載日:2019年3月15日
カテゴリ:健康栄養学科

 ある調査では、「甘いものが好きですか」という問い対し、回答者の74%が「好き」と答え、「嫌い」と答えた人はわずかに2%でした。残りは「どちらでもない」です。甘味は動物種を問わず広く好まれることが知られていますが、人もまた甘味を好むことを示す結果です。また、10歳代や20歳代の若年世代の方が30歳代以上より甘味嗜好が高いことも示されました*。

 さて、砂糖を使用する菓子類はまさに「甘いもの」ですが、ショートケーキなどの洋生菓子系と和生菓子系では好まれ方に差があることも明らかになっています*。20歳前後の男女大学生を対象に各種菓子類に対する好き嫌いの割合を現在と過去(小学生の頃、中学生の頃)について主観的に自己申告してもらった結果、85%が洋生菓子を「好き」と答え、その嗜好は過去から変っていませんでした。一方、餡入り和菓子について現在「好き」との回答は56%ですが、過去(37%)と比べて増加しています。小学生の頃は嫌いであったが、中学生頃から好きになるという傾向が見られ、女子学生により顕著でした。砂糖と脂質を多く含む洋菓子系の甘味食品に比べると、その多くが小豆餡を使用している和生菓子は子どもにはあまり好かれないようです。大人になり和生菓子の食感や風味などに馴染んだことに加えて、低カロリーでポリフェノールなどの機能性成分を多く含むことも「好き」の割合が増加させる理由かもしれません。

 砂糖が遣唐使により日本に初めてもたらされた当時は大変な貴重品であり、薬用として使われました。その後の砂糖の普及は、和菓子を生み出し、日本の食文化として定着させることに大きく貢献しました。和菓子には「その季節だけにつくられる和菓子」と「季節を表現する和菓子」のふたつがあります。適度の砂糖の摂取は、知的活動の活発化や気分の改善に効果が認められています。季節を映す和菓子と抹茶でリフレッシュされてはいかがでしょうか。
                     
(食物栄養学科 小野和夫)

                                        
*砂糖百科 p.124~126 社団法人糖業協会 (2003)
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