山陽リレーコラム「平井の丘から」

受験シーズンの思い出  田中 愛子
[2019年2月28日]

掲載日:2019年2月28日
カテゴリ:看護学研究科・助産学専攻科・看護学部

 現在受験シーズン真っ只中で、受験生の皆さんは合格発表まで緊張と不安の中を過ごしているかもしれません。看護師・保健師・助産師国家試験も2月が受験シーズンで、つい先日今年度の試験が終了しました。

 受験と言えば、お正月の初もうで等で合格祈願をすることと思います。私も、高校受験から大学受験、看護師国家試験の受験など様々な受験で合格祈願を行いました。私の出身県には、学問の神様・天満宮の総本社『太宰府天満宮』があります。もちろん、私の今までの合格祈願も太宰府天満宮で行い、最近は看護師・保健師国家試験を受ける学生さんの合格祈願を行うことにしています。

 太宰府天満宮は、菅原道真公の御神霊をお祀りしている神社です。道真公は、幼少期から学問の才能を発揮し、学者としての最高位である文章博士となった方です。しかし、壮年期に政略により京都から太宰府へ左遷されることになりました。京都を離れる際に詠まれた有名な和歌があります。

『東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ』
(春風が吹いたら、香りをその風に託して太宰府まで送り届けてくれ、梅の花よ。

 主人である私がいないからといって、春を忘れてはならないぞ。)

 この和歌にあるように、道真公は梅をこよなく愛しており、太宰府をはじめ天満宮は梅の社紋となっています。太宰府天満宮は梅の花もたくさん植えられており、春が近づいてくると赤や白のかわいい梅の花を見ることができます。現在はなかなか梅の季節に太宰府へ行くことができませんが、岡山で梅の花を見ても太宰府天満宮と受験でドキドキしたことを思い出し、懐かしく思います。地元を離れて10年以上経ちますが、地元を思い出せるものがあるとほっとできます。

 最後に・・・山陽学園大学の学生さんをはじめ、全国の受験生の皆さんにわくわくするような春が訪れますように!

参考:太宰府天満宮HP http://student.dazaifutenmangu.or.jp/ 

ソーシャル・キャピタルと健康との関係について~母の足に転倒してできた傷の治癒過程に及ぼす影響~  人見 裕江
[2019年2月15日]

掲載日:2019年2月15日
カテゴリ:看護学研究科・助産学専攻科・看護学部

 我が国は、急激な少子超高齢社会であり、2025年以降には、団塊の世代が75歳を超える。多死社会となり、人口減少が課題となっている現在、人々の健康に関する考え方は、大きく変容してきている。そして、今、元気な時だけでなく、病気や障害、老い、まさに臨死の状態を体験しているその人にとっての健康のとらえ方、意識が大切である。現在の自分の健康状態をよいと感じるかどうかを主観的健康感といい、「とても健康」という人は10年後の生存率で30%も長寿につながることが明らかにされている(星、2002)。

 一方、ソーシャル・キャピタルとは、家族や友人、近隣の人々への「信頼」と、互いに助け合い、地域貢献するといった「規範」、および近所づきあいやサークル活動などの「ネットワーク」のことである。この人と人との絆や社会のつながりがもたらす「力」は、健康向上をもたらす。すなわち、人々の行動や健康が、周囲の社会環境の影響を受けていることが研究により明らかになってきている。

私には三人の娘がいて、それぞれ結婚し、3人、3人、4人の母親となっている。私がずーっと看護職として仕事をしてきたので、彼女らにとって、育ての親でもある祖母(私の母)は、両肩の腱の断裂に加え、変形性腰椎・膝関節症や胸部腹部大動脈瘤などの病気をもっていて、腰や膝の痛みで、椅子やトイレからの立ち上がりが不自由となり、よく転倒するようになった。私と同居しているが、家にひとりでいる時には見守りが必要となった。次女家族が隣に住んでいるので、夕食はほとんど毎日共にしている。

 母は、一昨年の3月のある日、デイサービス(週4回)から帰宅し、台所の机の所で、コーヒーを作ろうとして、転倒しているのを発見された。仕事から帰宅した次女が気づいて、夫を呼び、二人がかりで起こしてみると、左足のふくらはぎに水疱のある大きな傷ができていた。すぐに、かかりつけ医を受診して、毎日、軟膏を塗って、ガーゼ交換をするように説明を受けた。しかし、1か月ほど経過しても一向に回復の兆しが見えず、循環が悪いためか、足の指が黒くなってくるようで心配な状態となり、医療センターの皮膚科に紹介され、即、入院、切開手術となった。突然の怪我と入院で、母も困惑したが、2泊3日で退院となった。家に、医療職のものがいるということで、入院での治療は免れたが、毎日、創部をシャワー洗浄し、ガーゼ交換をするように指導を受け、週1回の通院で、経過をみることになった。

 次女のいるデイサービスで、シャワー洗浄とガーゼ交換をお願いすることになり、水曜日と週末の3日間は家で、夜、私か次女が行った。毎日毎日の傷の手当とフットマッサージを繰り返した。まさに、在宅における看護の基本的な技術の積み重ねである。

 そして、1日、1日と、本当に、わずかずつ、わずかずつであるが、薄い、赤くきれいな皮膚(肉が盛ってくるような感じ)ができてくるようで、日にちが薬といった状態であった。デイサービスでの様子と私が手当てをした時の傷の様子についての情報を共有し、皮膚科医、フットケア士にも伝えながら、一喜一憂する日々の積み重ねであった。

 母の足の傷は、このように医療機関と在宅福祉サービスの利用に加え、曾孫や孫たち家族や親せきとのつながり、近所の友だちの「きみちゃん、どねんしょ-ん?!」と訪ねてくれるサポートで、半年かかって、何とか、皮膚移植もしなくて済み、傷は完全に塞がり、癒えたのである。(昨年は、転倒して大腿骨骨折で、プレート固定して、トイレまでの2、3歩の歩行しかできなくなり、現在は車椅子での介助による移動の暮らしになっている。)

 この時の母の足に転倒してできた傷の治癒過程に及ぼす影響を考える時、ソーシャル・キャピタルと健康との関係について深く気づかされる。社会環境の規定要因が、人々の絆から生まれる資源であるソーシャル・キャピタルであるとされている。人々のつながりが豊かであることが、情報や行動の普及や助け合い、規範形成を通じて健康に寄与する可能性が指摘されている(相田他、2014)ことと同様に、傷の治癒をより促進させたと考えられる。

90歳の母と1歳の十番目の曾孫

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