山陽リレーコラム「平井の丘から」

川の流れ・人の流れ・食の流れ  藤井 久美子
[2018年12月25日]

掲載日:2018年12月25日
カテゴリ:ビジネス心理学科

 学園は130余年,伝統は伝え継ぐことと感じるこの頃です。学園歌にある「あさひの川の 清き流れに~」を聞くと,私の出身高校も旭川の近くにあり,川の流れを見るのが好きで時々歩いて相生橋を渡っていたことを思い出します。今は毎朝通勤で旭川を渡り,ちらっと「今日の川の様子は~?」と見てしまいます。

 高校生のころから食物の道に入り始め,調理はおもしろいなぁとずっと歩いてきました。調理が好きということではなく(と言うと,えっ!?そうなのですかと言われることが多いです・・)調理は科学であることがおもしろく,研究の中心になっています。私の「おもしろい」に共感してくれる学生たちがゼミに集まり,その先輩たちに惹かれて下級生たちが集っていく流れを感じるようになり,この流れが伝統を形成していくのかと思うようになりました。

 調理の科学に加えて食の伝統にも興味がわき,それは岡山の食材(例えばぶんず:緑豆,ひら:曹白魚など)について地域の方々からお話を伺ったことがきっかけでした。ぶんずの栽培は瀬戸内の島々の傾斜地では畑の流れ止めとなり,豆の香り・味がよく砂糖が貴重だった時代には砂糖が少なくても美味しく食べられたとのこと。また効能も期待されていたということで調べてみると,食生活の洋風化で不足しがちな亜鉛,骨や心の安定に関わるカルシウム,ストレス対抗のビタミンA,疲労回復のビタミンB群などを小豆:あずきよりも豊富に含み,現代の私たちにもありがたい存在であることがわかりました。

 ぶんずの食し方も小豆のような甘味,粥やおこわだけでなく粉にして麺を作るなど,生活の知恵,工夫でもって有効に活用していたことに改めて感心させられます。地域の食の流れ,食文化についての書は意外に少なく,伝え聞き伝え継ぐことの大切さに気付かされ,私の中の食の流れに新たな入口を見つけることができました。ぶんずの食し方を受け継ぎつつ,学生たちにもなじみやすいものに発展させると,そのあっさりとした甘みを好む声が流れるようになっています。



参考文献 日本調理科学会企画・編集:伝え継ぐ日本の家庭料理 小麦・いも・豆のおやつ,農山漁村文化協会(東京),p.70,2018

広島の土砂災害  澤 俊晴
[2018年12月10日]

掲載日:2018年12月10日
カテゴリ:地域マネジメント学科
 今年(平成30年)は、岡山でも大きな災害があった。岡山では河川災害が主であったが、隣の広島では土砂災害で甚大な被害が生じている。
 広島では、平成26年にも、更には平成11年にも土砂災害が発生している。平成11年の土砂災害では32名、平成26年の土砂災害では77名、そして今年の災害で118名の方が亡くなられている。
 砂防堰堤や流路工の整備、法面工事などによる発生防止策が長年に渡ってとられてきたにもかかわらず、このように土砂災害による被害はなくならない。
 私は専門家ではないので詳しいことはわからないが、地球温暖化も、土砂災害が多発する要因の一つになっているのであろう。

 最近では、ハード対策だけでなく、土砂災害警戒情報や災害ハザードマップなど、避難行動を促す取組にも力が入れられている。
 確かに、災害から逃れるためには、事前の避難が大事だと思う。しかし、河川氾濫に比べて、土石流や崖崩れは、突然に発生するし、どの程度の雨であれば裏山が崩れるのか予測することは非常に困難である。そのため、避難のタイミングの判断はとても難しいと思う。
 まして、高齢者だけの世帯のような災害弱者の場合は、避難行動そのものにも危険を伴うだろう。
 土砂災害による被害をなくすためには、災害が発生しそうなところは全て避けて居住するしかないのだろう。とはいえ、強制的な移転は、居住移転の自由を侵害するおそれがあるし、移転費を税金で補償することへの国民的理解が得られるのかという問題もある。

 なかなかに一刀両断にいかないのが、世の中である。
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